おしっこトラブルについて

おねしょ(夜尿症)について

おねしょ(夜尿症)とは(小児科教授が伝えたいこと)

1.おねしょとは

おねしょとは、夜間に寝ている間に無意識のうちに尿を漏らしてしまう症状のことをいいます。日本夜尿症学会では、5歳を過ぎても続く場合は「夜尿症」と診断します。「夜尿症」の治療やお泊まり対策が必要になるのは小学校に上がってからが多いです。

10〜20年ほど前は、集団での宿泊体験は小学校高学年の修学旅行が最初でしたが、最近は保育園のお泊り行事やクラブ活動、学校の課外活動なども多くなり、それにつれて幼稚園や小学校低学年から保護者から離れての宿泊が始まるため、より早期の対策が必要になっています。

夜尿症の年齢別の割合では、5歳で15%、10歳で5%、15歳で2%ぐらいのお子さんにみられます。

修学旅行に参加する11歳前後でも1クラスに1〜2名程度はおねしょするお子さまがいます。成人したあとでも200人に1人ぐらいは夜尿症が残ります。

13歳を超えても夜尿が治らない場合は成人型夜尿症への危険性があると考えています。

2.どうしてうちの子供だけおねしょするの

夜尿症の原因として、いくつかの理由が考えられますが、完全に科学的に証明されている原因はみつかっていません。現在考えられている原因としては以下のことが考えられます。

原因1

睡眠中におしっこを濃縮し、おしっこの量を低下させるホルモン(抗利尿ホルモン)が充分に分泌しないために、膀胱容量以上におしっこが作られてしまう。そのため、就寝してから膀胱に対して満杯になる時間におねしょが出てしまいます。

原因2

自律神経の働きが弱く、夜間睡眠中に膀胱が充分大きくならないたいために、おしっこが膀胱からあふれてしまう。日中はたくさんの尿が貯められるのに、睡眠中は膀胱が小さくなっておねしょをするお子さんもいます。

原因3

睡眠のリズムや寝付きが悪く、本来眠りが浅くなる明け方に、眠りが深くなってしまい、尿意を感じることが出来ない。特に自閉症やADHDなど発達障害があると、睡眠の質が低下しおねしょをしやすくなります。

これらのいずれか、または全ての原因が合わさって、夜間睡眠中におしっこで下着や寝具等を濡らせてしまうと推察されています。

昼夜の睡眠リズムと排尿リズムが確立されていない幼児期では、おねしょは生理的な現象であり問題はありませんが、6歳を過ぎても週に1-2回以上におねしょをする場合には、医療機関に受診して生活のアドバイスを受けることをオススメします。

夜尿症に詳しくないドクターや子育て専門家の一部の方からは,おねしょは育て方や本人の性格、さらに精神的な問題などに原因があるといわれますが、医学的には実際のところほとんど関係はありません。

おねしょの遺伝的な関係はよく知られています。両親に夜尿症があった場合、お子さまが夜尿症になる頻度は75%、片方の親に夜尿症があった場合は50%になるといわれており、かなり遺伝的な要素が強いと考えられています。また,お子様の夜尿症の治る時期は,両親のいずれかが夜尿症の治った時期に一致することが知られています。例えば、父親の夜尿症が小学校高学年に治った場合は、特に治療しないと、そのお子さんも小学校高学年まではおねしょが続く可能性が高いです。

3.おねしょにはどんな病気が隠れているの?

夜尿症の中にはまれに腎臓、膀胱、尿道、脊髄、内分泌、神経、精神など、体の他の部位に病気を認めるものがあります。以下の症状がある場合は、他の病気の合併が疑われるため、症状や疾患に応じて必要な検査を行う必要があります。

  • 発育や発達が遅れている
  • 注意欠如や多動がある。または自閉症や学習障害といわれたことがある
  • 尿路感染症や膀胱炎に罹ったことがある
  • 昼間のおもらしをよくする
  • 日中のトイレがとても近い
  • 背骨(腰椎)やお尻の皮膚に異常(脊髄脂肪腫など)がある
  • 頑固な便秘や便のおもらし(便失禁)を伴う
  • 睡眠時に息を止めたり、大きないびきをかく(睡眠時無呼吸症候群)

これらの症状が認められる場合は、血液や尿検査に加えて、頭部CT検査やレントゲン撮影、腹部超音波検査、さらに脊髄MRIなどの専門的な検査を行って合併症の発見が必要になります。

そのため、なるべく設備の整った医療機関を受診することが大切です。しかし、多くの夜尿症の子どもは、これらの症状の合併は少なく、実際に病気がある頻度は数%以下と考えられています。

1
2
3
4
5
6